授業が終わってうちに帰ってきて、パソコンに電源を入れる。
息をふきかえす。つながる午後。
することがないわけではないのだが、やはり日本とつながっていたい。
最近ではパソコンの前が一番落ち着く。
何をするわけでもなく、音楽を聴いていたり写真をいじったり
メールチェックをしたり。投稿詩をわくわくしながら読んでいたりもする。
つながる午後。優しい日差し。
・・・のはずが。
今日はなんだか様子が違う。
天井のほうで妙な音がする。かすかな物音。
パソコンに向かいながらもやはり気になってしまう。
この部屋には私以外いないはずなのに。
以前金縛りに遭ってから、この部屋では不思議なことが起こっている。
食べ物が早く腐る。
というのは冗談だが、触りもしないのにパソコンの画面上のポインタが動きだしたり。
今日のように天井で音がしたり。
ラップ現象だろうか。
まぁ、何にしても目をやったところでラップ音は止まらないはずだ。
怖がっていても仕方ないので、とりあえず無視しておこう。
そのうち仲良く共存できるようになればそれが一番よい。
とは思っていたのだが、今日はなんだかおかしい。
いつものラップ音と感じが違うぞ。
羽音・・・・・・???
「おかしいな」と振り仰いでみて驚いた。
スズメバチ!!!!!!
体長5センチはあろうかという巨大スズメバチが、天井のシャンデリアに
しがみついたり離れたりを繰り返している!!!
あぁ、どこから入ってきたの。(T-T)
窓は開いていないはずなのに。
いや、それよりも。こんな巨大バチに刺されたら死んでしまうかもしれない。
すみやかに玄関のドアの前に避難したものの、どうすればいいのか。
やらなければやられる。妙に冷静に観察している場合ではないのだ。
しかし天井は高い。
下手に手出しして怒らせてしまって反撃などされたら、
私は孤独死するかもしれない。
武器と呼べるものが殺虫スプレー(オプションとしてバルサンも挙げておこう)と
ラケット型電気蝿とり器しかないというのは痛い。
今日、このような状況に置かれている私には痛すぎる。
結局、為す術がないのでとりあえず部屋の外に出てみた。
現実から目をそむけることで解決を図ろうとする。
そんなことをしてみたところで何ら根本的な解決には向かわないのに。
相当混乱している。
仕方がないので階下のN先生のうちに愚痴を言いにいった。
いやぁ、参ったことに、こーんなでかいハチが部屋にいるんですよ。参った参った。
すると心優しいN先生は、蝿たたきを長い竹のさおの先にくくりつけて
武器を自作してくださり一緒に部屋まで来てくださった。
「こりゃあ大きいねぇ・・・・・・。」
小さなつぶやきだったが静かな闘志が燃えている!
そしてスズメバチに向かい武器を振り下ろした!!!
・・・その姿には哀愁さえ感じられた。(T-T)
スズメバチはといえばN先生の攻撃を何とか逃れ、ソファにしがみついている。
もらったぁぁぁ!!!!
私はN先生から蝿たたきを半ば強引に受け取り、静かにハチにかざした。
そして踏みつけ踏みつけ踏みつけ!
やらなければやられる、という思い込みから何度も激しく攻撃を加えた。
そんな狂気にも似た私の行動を制してN先生はおもむろにティッシュを取りだし
息も絶え絶えのハチをくるみ、外のゴミ箱まで捨てに行ってくださった。
あぁ。
しかし、窓は全部閉まっていたはずなのに、一体どこから入ってきたのだろう。
これもラップ現象なのだろうか。
*
今日の日記は長いが、長くなりついでにもうひとつ。
夜、学生から誘われて学校に映画を見に行った。
ときどきこうして日本語ドラマの上映会が開かれているのだ。
今日の演目は、竹野内豊&ケリー・チャン(陳慧琳)主演の「冷静と情熱のあいだ」。
辻仁成&江國香織の小説でもおなじみである。
私は小説にはまったクチなので、映画はとても楽しみだった。
イカン、学生の前で泣いてしまうかもしれない。
でも感動に正直な姿はもしかしたら意図しないところで
意外な教育効果を生むかもしれない。
(うぅむ、阿呆だ。(T-T))
ということで念には念を入れてハンカチとポケットティッシュを
準備してでかけたのだが、何が何が、見事に期待は裏切られてしまった。
ストーリーは小説とかなり違っていたが、映画自体はまぁいい。あれはあれでいい。
しかし、ありゃなんだ。
VCD(映像と音入りのCDで、中国ではVHSのかわりに出回っている)。
(T-T)
映画館で隠し撮りしたものをコピーして売っているものなのか、
画面の上下に劇場の映像が映りこんでいる。
臨場感があるといえば聞こえはいいが、
最初から最後まで映画館の天井が映っているのはいかがなものか。
途中で画面の前を人影が横切るし。なんだこりゃ。
しかも画像が荒く、時折途切れ途切れになる。
声がこもっている。日本語が聞きとれない。
・・・非常に集中しにくかった。
また日本に帰ってからゆっくりまったりと見ることにしよう。
あぁ、VCD。(T-T)